第 1 週 (01 - 06)
6 月 5 日
日記を始めてみます。
今日は derived Nakayama(例えば Stacks project, tag 0G1U)の証明を追いました。 主張は次です :
命題. を可換環とし、 を の有限生成イデアルとする。 このとき、derived -complete な対象 に対して、 なら である。
証明は意外と単純です。 computational な部分は、Koszul 複体の一般的性質 くらいでしょうか。
- 仮定に依存しない観察 : 列 を考えて各 cofiber をとると cofiber sequence を得るので inductive に です。 これを繰り返し用いれば、 の exactness から です。
- 一方、上で述べた性質から各 に 加群の構造が入るので、仮定 と Postnikov tower を考えれば inductive に が分かります。
- この 1, 2 を合わせると各 に対して ですから、 が derived -complete であったことから です。
ちなみに derived でない類似として、 加群 が -adically separated (i.e. ) のとき、 なら が成り立ちます( なので )。 また、 の kernel が なので、 加群 が -adically complete なら -adically separated です。 なお、 の有限生成イデアル と 加群 に対して、 が -adically complete であることと derived -complete かつ -adically separated であることは同値です(例えば SAG 7.3.6.3)。
よく使う古典的な中山の補題は有限生成加群に対するものだと思います。それに対応して、perfect complex に対し上の同様の主張が成り立つようです(Gemini によると、証明としては古典的な中山を用いるものや、perfect complex 上で Cayley–Hamilton の類似が成り立つことを利用するものがあるそうです)。 また、Krull の交叉定理より、もし が Noether なら、 の Jacobson 根基に含まれるイデアル と有限生成 加群 に対して、 は -adically separated となります(例えばアティマク系 10.19)。 そのため、この状況においては通常の中山の補題と上で述べた -adically separated 版の中山の補題は関連していると言えます。 最初に述べた導来中山は、有限生成性ではなく後者の方に着目した一般化ということになるのでしょう。
6 月 6 日
普段ずっと Typst を使っているために日記の TeX で一生打ち間違えるので、日記を長く続けるためにも、話の詳細は余裕があるときだけ書くことにします。
おとといくらいに Khan–Rydh の “Virtual Cartier divisors and blow-ups” と Hekking–Khan–Rydh の “Deformation to the normal bundle and blow-ups via derived Weil restrictions” を眺めていて、その流れで今日は effective Cartier divisor について考えていました。 すこし仲良くなれた気がします。 とくに、スキーム の閉部分スキーム であってイデアル層が可逆であるもの(Stacks project ではこれを effective Cartier divisor と定義しています)と、 上の可逆層 とその regular global section の組の同型類の 1 対 1 対応は、スキームが affine かつ可逆層が principal な場合で具体的に計算してみて感覚が掴めてきました。 後者から前者への対応は、Khan–Rydh 3.2.3 において(そこでは derived 版を考えていますが)可逆層に付随するベクトル束を用いた方法での記述がされていて、少なくともわたしにとっては直感的でわかりやすいなと思いました。
昨日の話に関連して、考えたことを書き起こしてみます。 を可換環とします。 まず、 と に対して とおき、
と定めます。 すると、各 に対して、
となります。 ということでこれが Greenlees–May duality っぽいのですが、まだ local cohomology についてあまり調べていないので、上で定義した がいわゆる local cohomology と(どのようなときに)一致するのかは現状知らないです。 有限生成イデアル に対して、derived completion の方に関しては を各 に対し繰り返し derived -completion することで定義すれば、 が Nother 加群の場合にはそれが classical な -adically completion に一致します(SAG 7.3.6.1)。 そのため、 も繰り返し を適用することで定義すれば(すると という形になります)、適切な については通常の(?)local cohomology に一致してくれそうですが、どうなのでしょう。
local cohomology や derived completion を derived -category における limit, colimit を用いて(古典的な世界での torsion や completion の構成をほとんどそのまま真似た形で)定義してしまえば、local cohomology と derived completion の “duality” は圏論的考察のみで直ちにしたがうものであって、-categorical に構成された関手の古典的な世界の言葉との対応付けや、その -categorical な duality を古典的な世界にどう落とし込むか、というのが Greenlees–May duality や Grothendieck local duality の本質である、と言えるのかもしれません。 上の議論は有限生成イデアルの場合に限りますが…。
第 2 週 (07 - 13)
6 月 7 日
今日は syzygy に思いを馳せていて、周辺のいくつかのことがらの理解が深まってきました。 可換環 の元 による derived な商は、 同士の “高次の関係性” という単なる classical な商の場合それ単体では持っていないの情報も含めて 1 つの “環” となっているので(対象自体にエンコードされているというよりも、その対象が住む枠組み(≒ 圏)のおかげでそう思うことが可能になっている、といった方が正確かもしれません)、derived な context で考えると閉部分スキームの(定義イデアルの)“生成元同士の高次の関係性” の様子が関わってくる場面において綺麗に記述できたり見通しがよくなったりすることがあるのですね、という理解が生じました。
一切の形式的な話がなく、最終的に得た理解の標語的な記述しかしていませんが、たぶんそうすることが多くなりそうです。
6 月 8 日
今日は Adeel Khan の論文リストにある論文をいくつか眺めたり、そこから派生して色々考えたりしていました。 “Virtual fundamental classes of derived stacks I” を見ていて、derived (Artin) stack に対する virtual fundamental class の話は、まず の six-functors formalism で Borel–Moore homology の中に fundamental class が作れ(← 6FF で Borel–Moore homology を考えるのはよくあるものだと思うんですが、 でのそれと classical な話との関係はまだよく知らないです)、あとは が descent できるので stack 的対象まで拡張できますね、みたいな、ざっくりとそういうストーリーなのかなと想像しています。 での six-functors formalism と古典的な(?)交叉理論との関係をちゃんと知りたいなという気持ちです。
あと、数え上げ幾何の仕組みというか、考え方を知りました。 制限を課す前の考えたい対象たちのなす ambient な moduli 空間 を考えると、制約条件は の(閉)部分空間に、また複数条件を課すことはそれらの交叉をとることに対応していて、交叉が余次元 になるようにすれば、その交叉は -cycle になるわけで、あとは各 component の係数の和をとれば(i.e. -cycle に対応する cohomology 類と の基本類との pairing を計算すれば)数え上げが完了する、という。 たしかに~という感じです。 だから moduli 空間とかその上の交叉理論とかが数え上げ幾何の文脈で考えられているのですね、と納得しました。 derived stack に対する(“適切な”)fundamental class も、それは大事になるわけですね……。
mixi2 で、Connes–Consani の On the Absolute Geometry of Spec Z という論文が流れてきました。 Lurie の Fargues–Fontaine curve の講義 (リンク) の Overview のノートにおいて、標数 の代数閉完備付値体 に対する の 値点の “good replacement” がこれだろうという Scholze の heuristic idea が記載されており、実際にそのような性質をもつ "" を Connes–Consani による絶対幾何の枠組みで実際に対象として構成した、というような仕事なのだと現状理解しています。 Connes–Consani の一連の仕事をはじめとした絶対幾何の枠組みについては過去にほんの少しだけ調べてみた(検索の意です)ことがある程度だったので、こういうことができるんですね……という感想です。 同じ枠組みで “global な Fargues–Fontaine curve” も構成できたりするんですかね、というのが気になりました。 たとえば大域 Langlands 対応の幾何化に応用するにはその上での “解析幾何” ができてほしそうですが、そういうことをするのには適した枠組みになっているのでしょうか。 Scholze 系の界隈(?)から見たこの仕事の立ち位置が気になるところです。
6 月 10 日
今日は Fulton “Intersection Theory”, Déglise “Bivariant theories in motivic stable homotopy”, Déglise–Jin–Khan “Fundamental classes in motivic homotopy theory” などをみながら、Fulton に書かれている refined Gysin map や bivariant theory が、 の six-functors formalism の言葉でどのように解釈されるのか考えていました。
一般に six-functors formalism があると (relative) Borel–Moore homology が考えられ、proper covariance や étale contravariance をみたすこと、また係数に multiplication があれば積(合成)構造が定まることがわかります。 これを の six-functors formalism に対して考えると bivariant theory に相当するものが得られるということなのだと理解しています(なお、Déglise–Jin–Khan では Thom 同型がない場合も扱えるように twisted 版を基本に考えています)。 特に relative Borel–Moore homology の class があると、積構造によりその類は通常の Borel–Moore homology の間の射を定めるので、Fulton での formulation と同じようなものが出てきます。 ただ、Fulton に記載されている bivariant theory の性質(に相当する性質)が全てみたされるのかはまだよくわかっていません。 特に flat pullback の扱いがどうなるのかとか。
また、このように定式化すると、Fulton でいう bivariant class を定めることは、relative Borel–Moore homology の class(特にこれは における射です)を定めることに対応します。 Déglise, Déglise–Jin–Khan では Fulton での canonical orientation(17.4 節参照)に相当する relative Borel–Moore homology の class のことを fundamental class と呼んでいて(正確には、ある射のクラスに対する system of fundamental classes という概念が導入されています)、それを構成しています。 係数となる motivic spectrum として motivic Eilenberg–MacLane spectrum を選んだとき、この fundamental class の構成から定まる (relative) Gysin map が Fulton での relative Gysin map と一致するのか、というのは自然な疑問だと思いますが、現状よくわかっていないです……。 Déglise–Jin–Khan での Example 4.4.4(のさらに特殊な場合)がそれっぽそうな感じもしますが、あまり詳しく説明がなされておらず、どうなんだろうという気持ちです(そこでは Déglise の Example 1.2.10 も参照されていて、それをみると relative でない Borel–Moore homology が(適切な仮定のもとで)higher Chow group を復元するということは書かれていますが、Gysin map については特に触れられていなさそうです)。
6 月 11 日
今日は HoTT ゼミがありました。 1 年くらい前から Rijke “Introduction to Homotopy Type Theory” を読んでいるのですが、次回か次々回でついに読み終わりそうです!
6 月 12 日
motivic homotopy theory と数え上げ幾何の関連について軽く調べていて、色々と面白そうな話があるんですね~となっていたり、motivic stable homotopy theory における前々からどんなものなのかよくわからなかったいくつかの概念の動機や位置づけが少しクリアになってきたりしました。 わたしが初めて motivic homotopy theory に触れたのは、Isaksen らの仕事に代表される、通常の球面の安定ホモトピー群を計算するために 上の motivic stable homotopy theory を逆に利用できるという話がきっかけでした。 いわゆる cofiber of の哲学です。 この における議論を経由する方法は、現代ではより purely homotopy theoretical な枠組みである -synthetic spectrum によって理解・利用されていると思います。 というわけで安定ホモトピー論的な興味から motivic homotopy theory について色々論文を眺めてみたことはあったのですが、そこで二次形式と関連しているような対象をいくつか見かけて、それらが何のためのものでどういう立ち位置の概念なのか、ずっとよくわかっていませんでした。 具体的には Milnor–Witt motivic cohomology や Hermitian -theory などです。
そしてそれとは独立に、上の日記にも書いているように、さいきん交叉理論について少し知りました。 その文脈で色々論文を漁っていたところ、数え上げ幾何に motivic homotopy theory を応用する話があることを知り、両者の関係について調べてみていました。 現状まだよく理解していませんが、どうやら、一般の体 上での数え上げ幾何を考えるとき、その “答え” は の元ではなく、 上の対称双線型形式(の類)になるべきだそうです。 Morel による定理として における motivic sphere の 次安定ホモトピー群が Grothendieck–Witt 群 で与えられる、というものがあるらしく、これが根拠のひとつとなるようです。 このことに対応して、Chow 群の代わりにそれを refine した Chow–Witt 群を使う、みたいな話もあるようです。 このような文脈を踏まえると、種々の spectrum の “quadratic 版” を考えたくなるのは妥当なのかもという気持ちになってきます(たとえば、Chow–Witt 群に対応するのが Milnor–Witt cohomology spectrum のようです)。 まだまだ理解度が浅いので、もう少し詳しく知っていきたいです。
第 3 週(14 - 20)
6 月 14 日
幾何学的対象の定式化についてぼんやりと考えていました。 ここに書くくらい内容のあることはあまりないのですが、smooth manifold の議論は思ったよりも smooth set による定式化を用いて記述できるのかも、ということをひとつ思いました。 いろいろ書き換えをやってみたい気持ちです。
6 月 15 日
HoTT ゼミがあり、今日でついに本文全てを読み終わりました! 最後は の基本群が と同型になることの証明で締めくくられました。 だいぶ HoTT での議論に慣れた気がします。 次は、しばらくしたら HoTT book の Rijke では扱われていなかった内容を見ていこうという感じになりました。