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可換環上の次数付けと Spec への乗法群の作用の対応

RR を可換環、MM を可換モノイドとしましょう。 このとき、RR 上の MM-次数付き環構造 (MM-graded ring structure on RR) とは、MM で添字付けられた RR の部分アーベル群の族 {Rx}xM\{ R_x \}_{x \in M} であって、次の 3 条件をみたすもののことをいいます。

  1. アーベル群として R=xMRxR = \bigoplus_{x \in M} R_x が成り立つ。
  2. 1R1 \in RRR の乗法単位元とし、0M0 \in MMM の単位元とすると、1R01 \in R_0 が成り立つ。
  3. 任意の x,yMx, y \in M に対して RxRyRx+yR_x \cdot R_y \subset R_{x + y} が成り立つ。

例えば、Z\mathbb{Z} 係数 1 変数多項式環 R=Z[x]R = \mathbb{Z}[x] を考えると、各 nZ0n \in \mathbb{Z}_{\geq 0} に対し Rn:=ZxnR_n := \mathbb{Z} x^n と定めることで、RR{Rn}nZ0\{ R_n \}_{n \in \mathbb{Z}_{\geq 0}} により Z0\mathbb{Z}_{\geq 0}-次数付き環になります。 ここで、Z0\mathbb{Z}_{\geq 0} は加法により可換モノイドとみなしています。

 一方、可換モノイド MM に対して、その モノイド環 (monoid ring) B:=Z[M]B := \mathbb{Z}[M] が定まります。 MM が可換であることから、BB は可換環です。 ここで、写像 Δ:BBZB\Delta : B \to B \otimes_\mathbb{Z} Bε:BZ\varepsilon : B \to \mathbb{Z} を、各 xMx \in M に対してそれぞれ Δ(x):=xx\Delta(x) := x \otimes x また ε(x):=1\varepsilon(x) := 1 と定め Z\mathbb{Z}-linear に拡張して定義すると、これは環準同型になります。 さらに、組 (B,Δ,ε)(B, \Delta, \varepsilon) は、モノイダル圏 (CRingop,Z,Z)(\mathrm{CRing}^\mathrm{op}, \otimes_\mathbb{Z}, \mathbb{Z}) におけるモノイド対象 (i.e. Z\mathbb{Z} 上の 双代数 (bialgebra) ) を定めます。 ここで、CRing\mathrm{CRing} は可換環全体のなす圏です。 したがって、組 (Spec B,Spec Δ,Spec ε)(\mathrm{Spec}\ B, \mathrm{Spec}\ \Delta, \mathrm{Spec}\ \varepsilon) は、アフィンスキーム全体のなすモノイダル圏 (AffSch/Z,×Z,Spec Z)(\mathrm{AffSch}_{/ \mathbb{Z}}, \times_\mathbb{Z}, \mathrm{Spec}\ \mathbb{Z}) におけるモノイド対象を定めます。

 さて、このとき、次の命題が成り立ちます。

命題. RR を可換環、MM を可換モノイドとする。 このとき、次の 2 つのデータは 1 対 1 に対応する。

  1. RR 上の MM-次数付き環構造。
  2. アフィンスキームのなすモノイダル圏 AffSch/Z\mathrm{AffSch}_{/ \mathbb{Z}} におけるモノイド対象 Spec Z[M]\mathrm{Spec}\ \mathbb{Z}[M]Spec R\mathrm{Spec}\ R への作用 (i.e. 加群対象構造)。

両者がどのように対応するのか、概要を説明しましょう。 詳細な証明は省きます。 まず、2 つ目のデータは、CRing\mathrm{CRing} において考えると環準同型

ρ:RZ[M]ZR \rho : R \to \mathbb{Z}[M] \otimes_\mathbb{Z} R

に対応します。 すると、RR 上の MM-次数付き環構造が、各 xMx \in M に対して

Rx{ rRrxR, ρ(r)=rxx } R_x \coloneqq \{\ r \in R \mid \exists r_x \in R,\ \rho(r) = r_x x\ \}

と定めることで得られます。 逆に、1 つ目のデータが与えられたとき、この条件式の通りに、RR の各直和因子ごとに ρ\rho を定義すれば、 2 番目のデータが定まります。 この対応が 1 対 1 であることも確かめられます。

 最後に、上の命題の特別な場合を見てみることにしましょう。 MM として可換群 (Z,+)(\mathbb{Z}, +) をとります。 このとき、群環 Z[M]\mathbb{Z}[M] は可換環 Z[x,x1]Z[x,y]/(xy1)\mathbb{Z}[x, x^{-1}] \cong \mathbb{Z}[x, y]/(xy - 1) と同型です。 また、アフィンスキーム Spec Z[x,x1]\mathrm{Spec}\ \mathbb{Z}[x, x^{-1}] は (Z\mathbb{Z} 上の) 乗法群 (multiplicative group) と呼ばれ、これを Gm\mathbb{G}_m と表記します。 補足すると、この場合 MM が群であることから Z[M]\mathbb{Z}[M]Z\mathbb{Z} 上の Hopf 代数 (Hopf algebra) にもなり、そのため Gm\mathbb{G}_m はその名前の通り実際にアフィンスキームの圏における群対象となります。 以上より、次の結論が得られました。

系. 任意の可換環 RR に対して、次の 2 つのデータは 1 対 1 に対応する。

  1. RR 上の Z\mathbb{Z}-次数付き環構造。
  2. アフィンスキームの圏 AffSch/Z\mathrm{AffSch}_{/ \mathbb{Z}} における乗法群 Gm\mathbb{G}_mSpec R\mathrm{Spec}\ R への作用。